
デザインの仕事をしていると、よく言われます。
「センスで決めているんですよね」
「パッと浮かぶものなんですか」
もちろん直感はあります。
経験によって磨かれる感覚もある。
ですが実際には、良いデザインほど迷います。
むしろ、本当に考えているほど迷う。
なぜなら、デザインには“正解”が存在しないからです。
数学のように、一つの答えへ向かうものではありません。
誰に届けるのか。
どんな時代なのか。
どんな空気感なのか。
季節や文化、感情まで含めて、デザインは変化していきます。
つまりデザインは、固定された答えを探す行為ではなく、
“応え”を探し続ける行為です。
同じ商品でも、
時代が変われば伝わり方は変わります。
同じ言葉でも、
見る人が変われば意味は変わります。
だからデザインは、一対一の単純な構造にはなりません。
一つの考えから枝分かれし、
さらに別の感情や背景と繋がっていく。
思考は、まるで螺旋のように広がっていきます。
その過程で、人は迷います。
本当にこれで良いのか。
もっと伝わる形があるのではないか。
この色でいいのか。
この余白でいいのか。
迷いは、決して弱さではありません。
それは、“届けたい”という責任感です。
ただし、一つだけ見失ってはいけないものがあります。
それは、方向性です。
どれだけ美しくても、
どれだけ目を引いても、
方向を誤れば、デザインは人を迷わせます。
暗闇へ向かう階段になってしまう。
だから私たちは、何度も立ち止まり、考えます。
このデザインは、誰をどこへ導くのか。
その問いを繰り返しながら、精査していく。
デザインは、装飾ではありません。
人を動かし、
未来へ向かわせるための道標です。
だからこそ、簡単には決めない。
迷いながら、進む。
それが、デザインという仕事だと思っています。
Beyond Design.
It’s Craft.